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しんやのきゃく

深夜の客

大倉 燁子

「モダン日本 九巻一三号」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,926 字 · 28 页

青空文庫

青褪めた顔

取り次ぎは出て来ない。

奥座敷の方に灯は見えるが、家の中は妙にしいんとしていて、まるで人気がないようだ。もう一度ベルを鳴らしてみた。耳を澄ませていると遠くの方で跫音のするのが聞えた。二三分待ったが、やはり誰も姿を見せない。

洋子は少し焦れったくなったので、今度は続けさまにベルを押した。

青褪めた顔

すると、ドアが細眼に開いて、そこから物怖じしたような二つの眼が覗いた。

「東京から参りました。御主人にお取り次ぎ下さい」

と、苦笑しながら名刺を出した。

相手は無言で、細い白い手を差延べてその名刺を受けた。と思うと、急にさッとドアを開けて、さも待ち焦れてでもいたように、息まではずませて、

「どうぞ、先生、お入り下さいませ。よくいらして下さいました!」打って変ったような人懐い態度で迎えた。

洋子は一目で、それが評判の美人、有松の養女美和子だと分った。十七八位だろうか、凄いほどの美しさだが、何分にも青褪めてまるで病人のようだ。しかも、彼女は小刻みにぶるぶると体を震わし、唇のあたりには微かな痙攣さえ見える。これはただごとではない、と直感したので、

「お嬢様、どうかなすったんですか?」