轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

はなかみろうにん

濞かみ浪人

吉川 英治

「サンデー毎日 新春特別号」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,425 字 · 39 页

青空文庫

『不破氏、ちょっと、顔を貸してくれないか』

背の高い、苦み走った美男子で、身装や動作にもそつのない武士が――御廊下の隅で出会い頭に囁いた。

『や。其許は』

と、数右衛門は、丸っこい眼を上げて、彼としては、最大な慇懃さをもって、お辞儀をした。

『――お千賀どのの御兄上でござったな』

『左様、てまえが、お千賀の兄、庄左衛門です。隠居や妹が、いろいろお世話になっておるそうな』

『何う仕って』

『いちど、お礼を述べたいと思っていたが、お役部屋も懸け離れ、先頃までお下屋敷の方に詰めていたので、つい折もなく、失礼いたして居りました』

『何の、その御挨拶は、それがしの方からいたす事』

『所で――今日は御用の御都合は』

『さしつかえない体でござるが』

『そこ迄、何うでしょう。交際って下さらぬか。ちとお寒いし雪模様だが』

『この頃、俳諧ばやりの由でござるが、運座の席へでも』

『はははは。子葉殿のような風流は、それがしなどのがらではありません。もっと俗な所で――』

と、其処では一度別れて、約束の刻限に、数右衛門が通用門から出て行くと、庄左衛門は先に外へ出て居て、灰色の宵空をながめながら立っていた。