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ひのとり
火の鳥
「愛と美について」竹村書房、1939(昭和14)年5月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,740 字 · 76 页
」
助七は、仰向に寝ころんだまま、両手で顔を覆い、異様に唸って泣いてた。
三木の二重まわしの中にかくれるようにぴったり寄り添い、半丁ほど歩いて、さちよは振り向いてみて、ぎょっとした。助七は、雪の上に大あぐらをかき、さちよの置き忘れた柳の絵模様の青い蛇の目傘を、焚火がわりに、ぼうぼう燃やしてあたっていた。ばりばりと傘の骨の焼ける音が、はっきり聞えて、さちよは、わが身がこのまま火葬されているような思いであった。
本編には、女優高野幸代の女優としての生涯を記す。
高野さちよを野薔薇としたら、八重田数枝は、あざみである。大阪の生れで、もともと貧しい育ちの娘であった。お菓子屋をしている老父母は健在である。多くの弟妹があって、数枝はその長女である。小学校を出たきりで、そのうちに十九歳、問屋からしばしばやって来るお菓子職人と遊んで、ふたり一緒に東京へ出て来た。父母も、はんぶんは黙許のかたちであった。お菓子職人、二十三歳。上京して、早速、銀座のベエカリイに雇われた。薄給である。家を持つことは、できず、数枝も同じ銀座で働いた。あまり上品でないバアである。少しずつ離れて、たちまち加速度を以て、離れてしまった。