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かそうこくふうけい
火葬国風景
海野 十三
「帝都日日新聞」1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,334 字 · 37 页
「いいかネ。死んだ筈の僕が斯うして君の前に立っているのだ。見たまえ、ここはすこし淋しいが、たしかに四谷の通りだよ。僕は生きていることを認めて貰えるなら首を横にちょっと廻して、君の恋女房の露子さんが生きているかもしれないことを考えないかネ」
(首を横にちょっと廻して……)と云われた八十助は、ハッと驚いて、幽霊男の両側をジロジロと眺めまわした。
「やっぱり気になると見えるネ。ふふふふッ」
と鼠谷と名乗る男は、煙草の脂で真黒に染まった歯を剥きだして笑った。
八十助は赤くなった。しかし彼の眼には、死んだ女房の幽霊らしいものは見えなかった。
怪人怪語
「イッヒッヒッ。……いくら探しても、まさか此処には居やしないよ」
鼠谷はますます機嫌がよかった。それだけ八十助は腹が立ってたまらなかった。
「君はこの僕を嬲るつもりだナ。卑劣なことはよし給え」
「ナニ俺が君のことを嬲るって?」鼠谷はわざと大袈裟に駭いてみせた。「それア飛んでもない言いがかりだよ。俺の言うことは大真面目なんだ。それを信じない君こそ実に失敬じゃないか……とは云うものの、君が一寸信じないのも無理がないと思うよ。