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かそうこくふうけい
火葬国風景
海野 十三
「帝都日日新聞」1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,334 字 · 37 页
彼は呼吸をこらし、身体をすくめてその異様な物音に聞き入った。
パチパチというような音が交り始めたと思う間もなく、今度は八十助の身体が、不思議に熱くなって来た。考えてみると、先刻から気がつかなければならなかったことだが、彼が暗黒の箱の中で気がついてからこっち、室内は春のように暖かだった。厳冬の真唯中だというに、まるで春のような暖かさは不思議だった。ところがいま急に熱くなって来たのでこの異様な温度の上昇に気がついたというわけだった。
「何が始まったのだろう?」
と思ううちに、パッと眼の先が明るくなった。といっても暁に薄っすりと陽の光りがさしこんでくる位の明るさだった。奇態なことに、別に臭気というものを感じなかったけれど、――それは後に至って、一種の瓦斯マスクが懸けられていたので、臭気を感じなかったことが判った――このパッと差し込んだ明るさと、パチパチと物の焼け裂けるような音響とは、八十助に絶望を宣告したも同様だった。彼の脳裏には、始めてこの不思議な場所についての一切が判明した。
「ううッ。これは火葬炉の中だッ。もう火がついて、棺が焼けはじめたのだッ。ああ、俺はどうなる!」