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ろうごくのはんにち

牢獄の半日

葉山 嘉樹

「文芸戦線 第一巻五号」1924(大正13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,671 字 · 16 页

青空文庫

――扉を開けろ!

――必要がない。

――必要を知らせてやろう。

――覚えてろ!

――忘れろったって忘られるかい。鯰野郎! 出直せ!

――……

私は顔中を眼にして、彼奴を睨んだ。

看守長は慌てて出て行った。

私は足を出したまま、上体を仰向けに投げ出した。右の足は覗き窓のところに宛てて。

涙は一度堰を切ると、とても止るものじゃない。私はみっともないほど顔中が涙で濡れてしまった。

私が仰向けになるとすぐ、四五人の看守が来た。今度の看守長は、いつも典獄代理をする男だ。

――波田君、どうだね君、困るじゃないか。

――困るかい。君の方じゃ僕を殺してしまったって、何のこともないじゃないか。面倒くさかったらやっちまうんだね。

――そんなに君興奮しちゃ困るよ。

俺は物を言うのがもううるさくなった。

――その足を怪我してるんだから、医者を連れて来て、治療さしてくれよ。それもいやなら、それでもいいがね。

――どうしたんです。足は。

――御覧の通りです。血です。

――オイ、医務室へ行って医師にすぐ来てもらえ! そして薬箱をもってついて来い。

看守長は、お伴の看守に命令した。