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ねこはち

猫八

岩野 泡鳴

「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页

青空文庫

が、もう、それを取り繕うことをしないで素直に、「いや感心いたしました」と、その小説が一座の作その物ででもあるかのように敬意を表した。「わたくしにも同じような悲哀がございまして、いかにも感心いたしました。けれども、もしわたくしにも、その、先生方のおしになる批評と申すのを一つ言わせていただきますと、その深井というのが自分の本意でない役を演じながら、それを子供に見せておいたのははなはだしい間違いだと思われますが――?」

「そりゃアどうでもえいことで、作者としては問題でない」

「ところが、わたくしにはどうでもいいわけに行かないのです」と、彼は自分もいよいよ討論会の仲間入りをでもしているかのごとく少し膝をにじりだして、天神さまの意見に反対するのであった。「わたくしにも子供がごぜいまして、総領と次男とは小学へ通ってますが、次男の十二になるのがわたくしの真似にかけちゃア天才で、わたくしが病気ででも席を欠勤いたしますと、お父アんの代りに行ってやろうなんて申します」

「は、はア」と、天神さまは感心したような、またばかにしたような笑い方をした。

「商売とは申しながら、たださえおやじがばかな真似をしておりますのに、わたくしはまた子供までばかにされたくないので、子供がおやじの出る寄席へ接近しないため、わざわざこんな不便な郊外にも住んでる