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ねこはち

猫八

岩野 泡鳴

「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,513 字 · 39 页

青空文庫

六

――じつは、○○家から来たのだが、同家ではただ今お前の話が出て、おもしろい芸をする者だそうだからすぐ来るように言ってこいとのことだが、と言うのでした」

六

この時、近眼があまり遅くなると困るからと言って席を立った。その横顔をじろりと見上げて、自分は少し不愉快の意を表したけれども、彼は気がつかなかった。その上に、また他の二人も立って、いっしょに帰って行ったのである。これが寄席なら、どうせ木戸銭はすんでるものだからという諦めもつきやすい。けれども人がせっかく心を落ちつけて正直に語り続けているその中途で失敬して行くのは、本統の失敬ではないかと思えて、諦めがつきかねた。途中の暗い横丁から化けてでてやるぞと言ってやりたかったが、主人を初め、まだ熱心な相手が残ってるので話の調子はさほど折れもしなかった。

「今話が出たと言ってすぐ呼びに来るていなことはいかにも華族らしいです、な。そういう場合にでも、わたくしは行かないこともないのでげすが、――江戸ッ子の気性として、あたまから金のことを言われると、反抗心が起りまして、な」

「しかし商売なら、そんな必要はないじゃアないか」