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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

ほんとうに、この一ヵ月、私が台所をやるようになってから改善され、筋も通った衛生的食事をして居りますから。無いならないように、有れば有るということをはっきり身につけ暮して居りますから。隣近所とのつき合も、この節はむずかしいが、自然に、私流に、親しみが出はじめました、それでなくては、こんなときやれるものではありません。誰も彼もが時間を浪費し骨を折って暮しているから、あの人も同じだ、というところに心の和らぐものがあるわけです。

心が和らぐと云えば、わたしはこの頃そうなのよ。ゆっくり先のように手紙かいている時間もないみたいな暮しになりはしましたが。暮しぶりにはわるくないと思って居ります、金曜日28日のことは、お目にかかって。これもすらりと行くらしい様子です。

世田ヶ谷の人から、ドイツ語の本もらいました、「緑のハインリッヒ」をかいたケルラーの「三人の律気な櫛職人」というのと、シェファーという人の「ドイツ逸話集」。アネクドーテンというのね、北の方ではアネクドートです。この人もひどいつとめらしい様ですし、「茂吉ノート」の先生も大した様子で、何だか二人とも(特に本の人は)短気になり、面白くなさそうでおこりやすいわ。