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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
八月二十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(国立公園富士箱根大涌谷の絵はがき)〕
八月二十日、永井荷風の「※(「さんずい+墨」、第3水準1-87-25)東綺譚」ではないがラジオはほんとうにきらいだ。この頃はあっちでもこっちでも。家々が開け放しだからなおたまりません。空が皺くちゃになるような感じですね。お気分はいかがですか。私は体の工合がつかれて余りひどいから明日あたりから暫く国府津へ仕事をもって行こうと思います。疲れがたたまっていてよろしからずです。きょうは又少々暑くなりましたね。
八月二十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 神奈川県国府津前羽村字前川中條内より(封書)〕
八月二十二日、晴、第二十五信、九十二度、きのうは、朝のうちそちらへ出かけてやっと夜着をとって来て、それから小さい例の茶色のスーツケースに本や着換えをつめて、四時に東京を立ちました。寿江子が横浜まで送りに来て、あとは私一人。この頃国府津は小田原にすっかり交通要点をとられてしまって、この頃は準急もとまらない。但し、街路はすっかりコンクリートになって、家の前の私たちがのぼった古松の生えた赤土の崖などはどこにもなくなってしまった。