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げんだいのふじんにつぐ

現代の婦人に告ぐ

大隈 重信

「大觀 第一卷第四號」大觀社、1918(大正7)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,854 字 · 25 页

青空文庫

けれども時代の意識は朦朧として、なおこの至理に通徹するを得ず、一夫多妻の宿弊滔々たる時に、大胆にも基督は巷に獅子吼して、一夫一婦論を提唱したのであったから、定めし一世の耳目を聳動したと同時に、彼等の喜ぶところと為らなかったであろうと想う。而も断じて行えば鬼神もこれを避く。彼がこの毅然たる勇気を振い起して、全欧州にこの教義を宣伝した結果は如何。今日の欧州諸強国の文明の進歩とその富強とは決して単純なる科学の発達それのみとはいえぬ。本づくところまたこの男女関係の粛清された一事が与って大いに力を為すものあるに因ると思う。即ち欧州の文明の進歩と富強とは、独り男子の努力に依らず、婦人との共力に俟つものが甚だ大であると思う。然らば欧州全土はことごとく名実で全うして、一夫一婦制が実行されているかといえばそうはいかぬ。事情を探れば頗る乱倫の行いもあり、公娼制度の行われているところもあれば私娼の如きは沢山に存在するというが如く、人類間に行われる一切の弊害の一として有らざる無しという有様であるけれども、概括的に言えば一夫一婦制が採用されているので、羅馬の帝室の権力に依り基督教が国教と定まりてより以来、この教義が道徳上に是認されて普く社会制度と結び、特に深く法律と結合したるその効果は偉大である。