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せいとしとのきろく
生と死との記録
豊島 与志雄
「帝国文学」1918(大正7)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,961 字 · 39 页
私は使をやろうかと思ったが自分で行くことにした。「大正六年十月二十一日午後一時四十五分死亡、重症消化不良症」という死亡診断書を私は医局から貰った。
俥屋が来た。知っている主人も来た。主人に死去の通知のため親戚へ走って貰った。そして私は、若い衆の俥に乗って、区役所と警察署とへ行って、埋葬認許書を貰って来た。埋葬地は故郷の、去年父が埋った墓地にした。
帰って来ると、堯の身体は看護婦がすっかり清めて置いてくれた。S子さんは荷物をまとめてしまってその側についていた。私は医員と看護婦長とに挨拶に行った。階下の応接室に丁度U氏が居られた。
「お気の毒なことでした。」と云われた。
「種々あり難う存じました。」
私は丁寧に頭を下げた。
俥屋が来たと通知があった。私は堯を胸に抱いた。堯はそのまま小さい両手を胸に組んでいた。
俥は裏門の方に廻されて居た。私は一番先の俥に乗って幌を下した。次の俥に荷物がのせられた。終りのにS子さんが乗った。そして私達は裏門から出た。
堯が死んだとは、私にはどうしても思えなかった。顔の白布を取ると、眼を少し開いて微笑んでいた。私は胸に抱きしめて、その顔に唇をつけた。