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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

競争心の烈しいもので。さよう親戚というものはな」

「他人同志でも同じでござろう」

「なまじいに血潮が通っているだけ、愛憎は強うございますよ。さようさよう親戚の方が」

「兄弟などは親戚中でも、特に血の濃いものでござるが『兄弟垣にせめげども、外その侮りを防ぐ』と云って、真実仲よくしていますがな」

「が、一旦垣の中を覗くと、他人同志では見られないような、財産争いというような、深刻な争いがありますようで」

「が、幸い我らには――さよう、浪江殿と拙者とには――いや拙者と伯父一族とには、そのような争いはありませぬよ」

「御意!」と、弦四郎は道化た調子で云った。

「だからこそ拙者申しましたので、貴殿と浪江殿とは恋人かのように、大変お仲がよろしいとな」

「御意!」

今度は茅野雄が云った。

「大変お仲がよろしゅうござる。その上に貴殿というような、おせっかいな人物が現われて、恋人らしい恋人らしいと、はたから大袈裟にけしかけなどしたら、事実恋仲になろうもしれない」

「よい観察! その通りでござる」

弦四郎はこう云うと憎々しそうにした。

「が、永遠の処女として、丹生川平の郷民達から、愛せられ敬まわれ慕われている、浪江殿を貴殿が手に入れられたら、郷民達は怒るでござろう」