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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

――いやあの晩は入ろうとした――と云うことを覚明殿に見抜かれたのが、失敗だったよ」

「茅野雄も内陣へ入りたがっていたようで」

「だからこそあの晩洞窟の口へ、こっそり忍んでやって来たのさ」

「そこで我々が襲ったという訳で」

弦四郎の一行は歩いて行く。

「どうともして今度こそ白河戸郷を、退治る方法を講じなければならない」

まだ弦四郎はこういうように云った。

「で、出かけて来たのだがな」

「ともかく一応白河戸郷へ、潜入する必要がございますな」

「そのためこうやって出て来たのさ」

弦四郎達は大森林を出た。

と、美しい花の曠野が、依然として人の眼を奪うばかりに、弦四郎達の眼の前に拡がった。

灌木に隠れ、丘に隠れ、弦四郎達は先へ進んだ。

と、にわかに立ち止まり、弦四郎はグッと眼を見張った。

白河戸郷の方角から、三人の男と一人の女とが、長閑そうに話しながら来たからであった。

「はてな」と、弦四郎は打ち案じた。

「遠目でハッキリとは解らないが、見たことのあるような連中だ」

で、じっと尚も見た。

歩いて来る四人は何者なのであろう?

一人は一ツ橋慶正卿であり、一人は松平碩寿翁であり、一人は刑部老人であり、一人は巫女の千賀子なのであった。