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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
「早稲田文学」1914(大正3)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页
……万物はみんなそうしているのだ。」かう云って、また盃を重ねて行った。……
夜のしらしらと明ける頃になって、ふと目を覚ました彼は蒲団ものべずに着物を着たままそこに酔いつぶれていた自分を見出した。ウイスキーの瓶が空になって転がっていた。机の上には、点けっぱなしにされていたランプが疲れ果てた、ぼやけた光をあたりに投げていた。酔は気持ちよく醒めかけていた。彼はあたりを取片附けて改めて床の中へ入った。
と、つい先刻見た一つの夢が朧ろげに彼の頭に思い出されて来るのであった。
……はじめ、お志保がそこに坐っていた、何か自分に訴える事でもあるような、憂わしげな顔付をしていた。と、庸介の母がそこへやって来て、何か厳しく彼女を責め初めた。その調子は非常に熱してはいるが、ひどくあたりを憚っているような所が認められた。母の口から時折彼の名前が呼ばれた……やがて、どうしたのか急にお志保はしくしくと泣き出した。と、それに続いて庸介の母も声を出して泣き伏した……
その朝は、庸介はいつもと同じ時刻に起き出で、いつもと同じように家の人達といっしょに朝の食事をした。
九
川原地に繁っている尾花に穂が出た。