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こうしゅうちんぶたい

甲州鎮撫隊

国枝 史郎

「講談倶楽部」1938(昭和13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,891 字 · 28 页

青空文庫

……」

尚、総司の寝顔を見守るのであった。

幾日か経った。お力――それは、沖田総司に、隠匿われた女であるが、植甚の職人、留吉を相手に、植甚の庭で、話していた。

「苅込ってむずかしいものね」

「そりゃア貴女……」

「鋏づかい随分器用ね」

「これで生活ているんでさア」

「ずいぶん年季入れたの」

「へい」

木蘭は、その大輪の花を、空に向かって捧げているし、海棠の花は、悩める美女に譬えられている、なまめかしい色を、木蓮の、白い花の間に鏤めているし、花木の間には、苔のむした奇石が、無造作に置かれてあるし、いつの間に潜込んで来たのか、鷦鳥が、こそこそ木の根元や、石の裾を彷徨っていた。そうして木間越しには、例の池と滝とが、大量の水を湛えたり、落としたりしていた。

鳥羽、伏見で敗れた将軍家が、江戸城で謹慎していることだの、上野山内に、彰義隊が立籠っていることだの、薩長の兵が、有栖川宮様を征東大総督に奉仰り、西郷吉之助を大参謀とし、東海道から、江戸へ征込んで来ることだのという、血腥い事件も、ここ植甚の庭にいれば、他事のようにしか感じられないほど、閑寂であった。

「姐さん、よくご精が出ますね」