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おとこぎらい

男ぎらい

豊島 与志雄

「苦楽」1949(昭和24)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,878 字 · 18 页

青空文庫

大きく戸を叩きます。黙っているとまた叩きます。

姐さんがまだ寝ていなかったらしく、二階から降りて来ました。

姐さんは私に声をかけましたが、返事をしないでいると、自分で表へ行って、戸を少し開きました。

三人ばかり、男のひとが、のめるようにはいって来ました。倉光さんのポマードの髪がぴかりと光りました。

私はもう起き上っていました。倉光さんたちが何か言ってごたごたしてるまに、そっと室から出て、草履をつっかけ、裏木戸をあけ、外にぬけ出ました。うちの中がこれ以上男くさくなってはもうとてもたまらず、外の清い空気が吸いたかったのです。

深い霧でした。それでも、霧の中がぼーっと明るいのは、月の光りがさしていたのでしょうか。

そのような霧を、私は夢で見たような気がします。濃い深い霧で、少しも動かず、遠くまで、高くまで、じっと淀み湛えているのです。月はどこにあるのか分らず、ただぼーと霧の中が明るいだけです。

小さな道を行き、少しく上ると、河の堤防の上に出ます。

河の水は、霧の下を、音もなく流れていますが、見通しは利きません。遠くで、太鼓の音がしていました。この夜更けに、お祭りの太鼓をまだ打っているのでしょうか。