轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いきょう
異郷
寺田 寅彦
「明星 第二巻第六号」1922(大正11)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,712 字 · 8 页
B君のこの仕方は、悪意に解釈すれば私にとってあまり快くは思われない種類のものであった。しかしこの人の剽軽で学者らしく無邪気な、そしてどこか親切な態度に馴れた私はその時でも少しも悪い心持は起らなかった。そして遠い世界の果ての生れ故郷をなつかしがる人の心持も決して悪くは思えなかった。
それにしても主婦の容貌があまり日本人によく似ているから、母親もオランダ人かと念のためにB君に聞いてみたが、やはりまぎれもない生粋のオランダ人だという事であった。私は不思議な気がした。当人は人から日本人に似ていると云われるのを喜んでいるそうである。
主婦は奥の間から古ぼけた手帳のようなものを出して来た。それをあけて見ながら、何かしら単語のようなものを切れ切れに読んで聞かせた。それは「コンニチワ」「オハヨオ」などというような種類のものであったが、あまり発音が変っているから、はじめは日本語だとは気が付かないくらいであった。何だか聞きとれない言葉が出て来たので帳面を見せてもらうと‘fitots’‘stats’と書いてある。「一つ」「二つ」という数のつもりであった。私は昔の日本の蘭学者のエレキテルなどというような言葉を思い出して覚えず微笑せずにはいられなかった。