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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
「宝石 第八巻第十一号」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,893 字 · 35 页
人通りはごくたまにしかなかった。工場のトタン塀に沿って古い電柱が二、三本、ほうり出してあった。松永はそれに腰かけて、一と休みしていた。
きょうは少し早く出すぎたようだ。うちに帰るまでに、まだ五、六時間ある。何かすばらしいことはないかな。あたりは妙に白っぽく見えた。秋の夕方には、よくこういう白さに出会う。すがすがしいが、物淋しい白さだ。少年時代を思い出させる郷愁の白さだ。
「おじさんは、このへんの人じゃないわね」
びっくりして、ふりむくと、同じ電柱の彼から一間ほどはなれた所に、女学生服を着た少女が腰かけていた。いつのまに来たのか、少しも気づかなかった。なんだか魔性のものでも現われたような感じだった。十五、六かな。まだ中学生だろうと思った。
「ウン、この辺のものじゃないよ。君は近くかい」
「ええ、じきそこに高等学校があるの」
「何年だい」
「二年生」
それにしては子供子供していた。
「おじさんは、遠くの人でしょう。ずっとずっと遠くの人でしょう。あたしたちと、ちがう世界の人でしょう」
松永は、なにかギョッとして少女の顔を眺めた。子供がふしぎな直感力を持つことを知っていたからだ。