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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
「宝石 第八巻第十一号」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,893 字 · 35 页
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「なんて名?」
「斎田五郎」
「で、きみ、あの青年と寝たことあるの?」
「ある。いちど。無理によ。八幡さまの森の中で、あたいを倒したの。それで、あいつ、あたいを恋人だと思っているのよ。あたいの方じゃ、あいつと寝たなんて考えてないわ。ひとりできめているのよ。あんなやつ、ちっとも好きじゃない。ゾッとするわ。松永さんが百倍も千倍も万倍も好きだわ」
そして、きゃしゃな手が、力いっぱい、彼を抱きしめるのだった。
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二時間ほどが、またたくうちにたってしまった。ふたりは古畳の上に寝ころがって、たわいもないことをささやき合っていた。その頃は、眼が暗闇になれて、お互の顔も、部屋の中も、はっきり見えた。雨戸はしまっていたけれど、方々破れているので、遠方の光が、うっすらと室内にさしこんでいた。
ふたりの足の方に、破れ障子が、ひらいたままになっていて、ふと気がつくと、その障子の向こうに、何か動いていた。松永は心臓の鼓動が烈しくなるのを意識した。やっぱりそうだった。あいつはここを知っていたのだ。いつのまにか、ここへ忍びこんで、さっきから、長いあいだ辛抱づよく、障子の蔭で、ふたりを見ていたのだ。