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きけいのてんにょ
畸形の天女
江戸川 乱歩
「宝石 第八巻第十一号」1953(昭和28)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,893 字 · 35 页
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十六歳の少女が、どうしてあのような妖婦になり得たか、常識ではまったく判断もつかなかった。それは神秘で、神々しくさえあった。夜ふけて、少女に別かれるのが、そして、宮城圭助に戻るのが、彼には、甘美な夢からさめるときのようにつらく、もの憂かった。
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宮城圭助は、夢の国の畸形の天女を恋することが烈しかったけれども、決して、一週間に一度という掟を破らなかった。彼の別世界を永続させるためには、この自制が必要欠くべからざる条件だった。
きょうは天女との四度目の逢う瀬であった。一週間前の晩には、ちょっと気になる出来事があった。十時頃、少女と別かれて、千住の裏町を歩いていると、うしろから呼びかけるものがあった。
「おじさん、今晩は。おじさんは、ふみ子を可愛がってくれてるんだってね。ありがとうよ。おれからもお礼をいうぜ」
そして、前に廻って、立ちはだかった。
二十五、六歳のヨタモン風の青年だ。ギャバジンのズボンに、茶色のジャンパーを着ている。雑貨屋の店の電灯が、青年の顔を照らした。狭い額に傷痕のあるいやな顔だった。テカテカ光らせた髪、眼が細くて、顎が張っていた。物を言うたびに、唇のはじを、いやな恰好にまげるくせがあった。