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ぎわく
疑惑
江戸川 乱歩
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页
いやに眼を光らせているのだ。そして、おれが降りて来たのを見ると、ハッとした様に、去り気なく部屋の中へはいってしまった。その様子が如何にも変だったので、おれは母親の立っていた場所へ行って、母親の見つめていた方角を見た」
「…………」
「君、そこに何があったと思う。その方角には、若い杉の樹立が茂っていて、葉と葉の間から、稲荷を祭った小さなほこらがすいて見えるのだが、そのほこらの後に、何だかチラチラと赤いものが見えたり隠れたりしているのだ。よく見ると、それは妹の帯なんだ。何をしているのか、こちらからは、帯の端しか見えないから、少しも分らないけれど、そんなほこらのうしろなんかに、用事のあろうはずはない。おれはもう一寸で、声を出して、妹の名前を呼ぶ所だった。が、ふと思い出したのは、さっきの母親の妙なそぶりだ。それと、おれがほこらの方を見ている間中、背中に感じた、母親の凝視だ、これはただ事でないと思った。若しかしたら、凡ての秘密があのほこらの後に隠されているのではないか、そして、その秘密を妹が握っているのではないか、直覚的にそんなことを感じた」
「…………」
「おれは、自分でそのほこらのうしろを探って見ようと思った。