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ぎわく

疑惑

江戸川 乱歩

「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页

青空文庫

そして若しその時、親父が下の石に腰かけていたら、彼を殺すことが出来るだろう。そういう複雑な計画が、暗々の中に含まれていた。しかも、その悪だくみを、おれ自身さえ知らずにいたのだ。つまり、おれは、親父を殺す装置を用意しておきながら、故意にそれを忘れて、さも善人らしく見せかけていた。くわしくいえば、おれの無意識界の悪人が、意識界の善人をたばかっていたのだ」

「どうもむずかしくてよくわからないが、何だか故意に悪人になりたがっている様な気がするな」

「いや。そうじゃない。若し君がフロイドの説を知っていたら決してそんな事は云わないだろう。第一、斧のことを半年の間も、どうして忘れ切っていたか。現に血のついた同じ斧を目撃さえしているじゃないか。これは普通の人間としてあり得ないことだ。第二に、何故、そんな場所へ、しかも危いことを知りながら、斧を忘れて来たか。第三に、何故、殊更にその危い場所をえらんで斧をおいたか。三つの不自然なことがそろっている。これでも悪意がなかったといえるだろうか。ただ忘却していたという丈けで、その悪意が帳消しになるだろうか」

「それで、君はこれからどうしようというのだ」