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ひゃくゆきょう
百喩経
岡本 かの子
「三田文学」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,474 字 · 21 页
簪を得る代りに蒔蔵は海へ命を落した。
五人買レ婢共使喩
五人の男が公平に金を出し合って一婢を雇った。一人の男が怒って婢に十鞭を与えると他の四人も権利を主張して婢に十鞭ずつを与えた。
五人で一人の女を雇った。山査子の咲く古い借家に。
五人は生活費を分担して居た。従って女の給金も頭分けにして払った。それと関係なしに山査子の花は梅の形に咲く。
平凡な雇女は呼びようもなくて雇主の五人を一々旦那様と呼んだ。でもその呼びかたに多少の特性を認めないこともない。
一人には、あの旦那様。
一人には、ちょっと旦那様。
一人には、恐れ入りますが旦那様。
一人には、いらっしゃいますか旦那様。
一人には、ただ旦那様。
と呼んだ。
主人の一人は洗濯物を女に出す。すると他の四人の主人も洗濯物を出す。機会均等。利権等分。彼等には独身もののサラリーマンらしい可憐な経済観念があった。
洗濯ものは五つ一様にきれいには洗えなかった。かけて干したシャツの袖に山査子の赤黄ろい実の色がこすりついたまま畳まれるようなこともあった。これを見つけた持主の主人は口を尖らして女を叱った。
すると他の四人も損をしまいと口を尖らして女を叱った。