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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页
そこへ坐ると濃厚な香りがぱっとひろがって、あたりいちめんに充満して、又四郎は危うくくしゃみが出そうになった。
「ようこそ秋成さま、ようこそいらっしゃいました、覚えていて下さいましたのね、有難う、うれしゅうございますわ」彼女はこういって媚びたながし眼で、大胆にこちらをみつめ、片手で髪をそっと撫でつけるようなポーズをし、またじっとみつめた、「貴方もうわたくしのことなんかお忘れになったと思っていましたわ、わたくしのほうではお噂を始終うかがっていましたの、悲しゅうございましたわ、わたくしがどんなに悲しい身の上だか、貴方にはおわかりになりませんわねえ」
「いやそれで来たのです、決して忘れたわけではありません、私は約束を忘れるような人間ではありません」
「そうですとも、お約束したんですものね」
彼女はこのときもう一方の手で、髪のもう一方をそっと撫でた。撫でながら横眼でこちらを見た。それは優美なポーズであったが、同時にかなり濃艶であり、一種むせるような官能的なところもあって、又四郎としては計らずも赤くなった。
「あの頃もそうでしたけれど、今でもやっぱり貴方は御美男よ、ありきたりの意味でいう御美男じゃなく、お顔やお姿よりお躯ぜんたいね、こうして拝見していると胸の奥のほうがむずむずするような、血が熱くなるような、躯じゅうをめちゃくちゃ