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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
そうにござります。そんなことから秀よし公は御前のしゅびがわるくなりまして、だん/\遠のかれましたのでござります。
さて信長公はわずかのあいだに数箇国をきりなびけられ、こと/″\くわがりょうぶんにくわえられまして、しょうしへの御ほうび、こうにんのおしおきなど、それ/″\御さたあそばされ、九がつ九日にはもはや岐阜のおしろにおいて菊の節句をおいわいあそばされました。重陽のえんはまいねんのことでござりますけれども、べっしてそのみぎりは大小名がよそおいをこらしてお礼にまいられ、ごんごどうだんのぎしきのありさま、めをおどろかすばかりであったともっぱらのうわさでござりました。おくがたはしょろうと申しふれられてしばらく江北におとゞまりなされまして、どなたにもたいめんあそばされず引きこもっておられましたが、おなじ月のとおかごろ、いよ/\尾州清洲のおさとかたへおかえりあそばすことになりました。当時信長公はぎふの稲葉やまを本城になすっていらっしゃいましたので、おくがたには閑静なきよすのおしろのほうが御つごうがよかったのでござります。もっとも途中ちくぶしまへさんけいなさりたいと云う