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もうもくものがたり
盲目物語
谷崎 潤一郎
「中央公論」1931(昭和6)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,341 字 · 148 页
たくと、そういう御口上でござりましたので、かついえ公もこゝろよく御承引なされ、ひでよし公の御饗応をおうけあそばすおやくじょうになっておりました。しかるところ急にえちぜんよりお迎えのかた/″\がにんずを引きつれて駈けつけて来られまして、何かもの/\しい御そうだんがござりましたが、秀勝公へは使者をもっておことわりにおよばれ、夜中にわかに北国おもてへ御ほっそくなされました。さればひでよし公の御けいりゃくがござりましたかどうか、わたくしのぞんじておりますところは右のとおりでざります。
それにしても、おくがたはどのようなおこゝろもちで御下向なされましたか。とかく再縁となりますと、いくらおりっぱな御こんれいでもさびしい気がするものでござります。おくがたも浅井家へおこしいれのみぎりは儀式ばんたんきらびやかなことでござりましたろうが、いまはおとしも三十をおこえなされ、かず/\の御くろうをあそばしたすえに、三人の連れ子をともなわれて雪ふかき越路へおもむかれるのでござります。それが、またどうしたいんねんか、おみちすじまでが此のまえとおなじ駅路をたどってせきがはらより江北の地へおはいりなされ、なつかしい