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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ
省線電車の射撃手
海野 十三
「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页
そのあとで警部は、今しがた第三の犠牲者のハンドバックから見付けてきた例の十字架に髑髏の標章を、車内の明るい燈火の下で、注意深く調べた。前の二枚の標章と合わせてこれで三枚になったのだった。警部の面には困惑の色がアリアリと現れた。グッとその小布を掌のうちに握りしめると、警部は、車外に出てザクリと砂利を踏んだ。
(おお呪いの標章よ)
警部は心の中でそう云って「ううむ」と呻り声をあげた。それを持っている人間ばかりが、どうして射殺されるのだろう。
窓外から弾丸を射ちこんだとすれば、その犯人は、なんという射撃の名人だろうか。呪いの標章を贈ったその人間を覘うこと正確に、しかもその心臓を美事に射ち貫くことは、実に容易ならぬ技量である。だがこの悪意ある射撃は、世紀末的な廃頽せる現代に於て、なんと似合わしいデカダン・スポーツではあるまいか。
小暗いレールを踏み越えて、ヒラリとプラットホームに飛びあがった大江山警部の鼻先に、ヌックリ突立った男があった。
「大江山さん、豪いことになりましたね」
「おお、貴方は、探偵小説家の戸浪三四郎さんでしたな」と警部は云った。戸浪は洗いざらしの浴衣姿というだらしの無い風をしていたのだった。