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しょうせんでんしゃのしゃげきしゅ

省線電車の射撃手

海野 十三

「新青年」博文館、1931(昭和6)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,355 字 · 45 页

青空文庫

「エビス駅を出るときには閉っていたんです」

「よォし、では乗客を禁足しとくんだぞ」

「わかりましたッ」

大江山警部は、若い婦人の屍体が転っているという二輌目の車輌の前へ、かけつけた。窓がパタリと開いて、多田刑事の泣いているような顔が出た。

「課長どの、殺されたのは赤星龍子です」

「えッ、赤星龍子が――」

総監から注意のあったばかりの女が殺された。警部自身が大きい疑問符を五分ほど前にふったその女が殺されたのだった。警部は車中へ入ってみた。

「課長どの」と多田刑事は警部をオズオズと呼んで、この車輌の一番先端部にあたる左側客席の隅を指した。

「ここの隅ッ子に龍子が腰を下ろしていました。向い側の窓はたしかに閉っていたんですが、ビール会社の前あたりまで来たときに、そこにいた地方出身の爺さんが、窓をあけちまったんです。私が止めようとしたときにはもう遅うございました」

「君は一体どこに居たんだ」

「向うの入口(と彼は指を後部扉へさしのべた)から龍子を監視していたのです」

「龍子は死んだか」そう云って警部はうしろを向いた。彼女は軽便担架の上で、裸にむかれていた。

「課長さん、重傷ですが、まだ生きています。