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さとうどろぼう

砂糖泥棒

黒島 伝治

1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,108 字 · 9 页

青空文庫

彼の足音をきゝつけると、二人は、

「お父う。」と、両手を差し出しながら早速、上り框にとんで来た。

「お父う、甘いん。」弟の方は、あぶない足どりでやって来ながら、与助の膝にさばりついた。

「そら、そら、やるぞ。」

彼が少しばかりの砂糖を新聞紙の切れに包んで分けてやると、姉と弟とは喜んで座敷の中をとび/\した。

「せつよ、お父うに砂糖を貰うた云うて、よそへ行て喋るんじゃないぞ!」

妻は、とびまわる子供にきつい顔をして見せた。

「うん。」

「啓は、お父うのとこへ来い。」

座敷へ上ると与助は、弟の方を膝に抱いた。啓一は彼の膝に腰かけて、包んだ紙を拡げては、小さい舌をペロリと出してザラメをなめた。

子供は砂糖を一番喜んだ。包んで呉れたのが無くなると、再び父親にせびった。しかし、母親は、子供に堪能するだけ甘いものを与えなかった。彼女は、脇から来て、さっと夫から砂糖の包を引ったくった。

「もうこれでえいぞ。」彼女は、子供が拡げて持っている新聞紙へほんの一寸ずつ入れてやった。「あとはまたお節句に団子をこしらえてやるせに、それにつけて食うんじゃ。」

子供は、毎日、なにかをほしがった。