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しゃちょうひしょ
社長秘書
佐々木 邦
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1926(大正15)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,738 字 · 14 页
「それについては面白い話があるよ」
を幾度拝聴したか知れない。何も修業だと思っている。但し流石に年の効で数の中には捨て難い傑作がないでもなかった。それを一つと筆序に塚本さんの逸話を一つ紹介して筆を擱く。
一年前に賢夫人を失った星野さんは今回良縁があって後添いを貰った。先方も未亡人だから式は極く簡略にやるとあったので、会社からは社長と塚本さん丈けが列席した。その翌日のことである。
「塚本君、祝言って奴は二度目のでも三度目のでも矢張り葬式よりは好いものだね」
と無論社長の方から話しかけた。
「葬式と一緒にされちゃ可哀そうですよ」
と塚本さんも時事問題なら敢えて辞さない。
「しかしナカ/\別嬪だ」
「綺麗ですね。そうして若いですよ。連れ子のある丈けが欠点です」
「子供がなければもっと面倒のないところへ行くよ」
「それは然うですな」
「若くて綺麗なら連れ子の二人や三人は辛抱するさ。先の賢夫人とは雪と墨だ。尤も賢夫人には元来美人はない。星野君はこれから一花咲かすんだろう」
「死ぬもの貧乏で先の奥さんが可哀そうだと妻は同情しています」
「それは然うだが、五人も子供があって見ると、矢張り後を貰わなければ立ち行くまい。