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ねぎさまみやた

禰宜様宮田

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页

青空文庫

絶えず口元に自嘲的な笑を漂わせながら、唇を噛んでいるお石は、すっかり自暴自棄になってしまった。

まだ何か望みがあり、盛り返せるかもしれないという未練が残っていたときには、懸命に稼ぐ気にもなり、怨む気もしたけれども、こうまで落ちきってしまえば、絶望した彼女の心は自棄になるほかない。

「へん海老屋の鬼婆あ!

何んもはあねえくなるまで、さっさとひっ剥だらええでねえけ、小面倒臭せえ。

乞食して暮しゃ、家も地面も入用んねえで、世話あねえわ!」

黙り返っているお石は、折々不意にはっきり独言しながら、ゴロンと炉辺に臥ころがったりした。

禰宜様宮田も、もう土地も何にも入用なかった。ただどうかして、今のいやな心持から一刻も早く逃れたいばかりなのである。

ほんとにお石の云う通り、乞食して暮しても、このごろのように怨みの塊りのようになっている境涯からぬけられたら、それでいい。

こっからここまじゃあ俺らがもん、そこからそこまじゃあ汝がもんと、区別う付けて置くから、はあ人のもんまで欲しくなる。

地体、どなたか様は、そげえな区切りい付けて、地面お作りなすっただべえか?

欲しいもんだらはあ遣るがえ……。