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ねぎさまみやた

禰宜様宮田

宮本 百合子

「中央公論」1917(大正6)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页

青空文庫

さっき行った人足も、やはりここでこうやって休んだとみえて、枯れかけた草を押し伏せて白土の跡が真白く残っている。

滲み出した汗を拭きながら、彼はあたりを見まわした。

すべてが寂しい。

滅入るように静かな天地には、もうそろそろ冬の寒さが争われない勢を見せて、すがれた叢、音もなく落葉して行く木立の梢を包んで底冷えのする空気がそこともなく流れている。

やがては霜になろうとする霧が、泥絵具の茶と緑を混ぜて刷いたような山並みに淡く漂って、篩いかけたような細かい日差しが向うにポツネンと立っている角子の大木に絡みつき、茶色に大きい実は、莢のうちで乾いた種子をカラカラ、カラカラと風が渡る毎に侘しげに鳴りわたる。

ジジー――ジジー――……

地の底で思い出し思い出し鳴く虫の声を聞くともなく聞いていた禰宜様宮田の心のうちへは、また海老屋のことが浮んで来た。

「……なじょにしたらよかっぺえ……」

幾度考えたとて、徒に同じ埒の中を堂々廻りするほかない。

彼は駸々と滲み出して来る無量の淋しさと、頼りなさに、自分の身も心も溺れそうな気がした。

今までは自分の後にあって、目に見えぬ支えとなっていてくれた何か、何かの力が、もうすっかり自分を見捨てて独りぼっち取りのこしたまま、先へ先へと流れて行ってしまうような心持がする。