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しゅうさいようしかがみ

秀才養子鑑

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1939(昭和14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,837 字 · 32 页

青空文庫

と丁度女学校を卒業した雪子さんが力をつけてくれた。その頃から寸法を知られているのだから、小室君は押しが利かない。一度失策ってからは試験恐怖症に取りつかれた。本科時代には試験中目の色が変っていた。親しい友達が毎日やって来て一緒に勉強してくれた。流石に取り繕うことを考えて、

「皆出来ないものだから、僕のところへ習いに来るんだ」

と言ったけれど、

「あなたが教えて戴くんですわ。それですから、お母さんと私が鰻丼を取って御接待するのよ」

と雪子さんは知っていた。これは養子に限ったことでない。苟くも主人たるものは妻女に何か性根を見せて置かないと甞められてしまう。

「銀座へ出てお昼を喰べようか?」

と小室君が相談をかけた。話は就職運動の帰途に続く。初夏の晴れ渡った日の正午近くだった。

「えゝ。御迷惑でなければ」

「変なことを言うものじゃないよ」

「オホヽヽヽ」

「成功するかも知れない。何うも印象が好いようだ。自分ながら溌剌として答えている」

「大丈夫よ、屹度」

「しかし山へやられるか、川へやられるか、分らないんだって。あゝいうことを話すところを見ると、採ってくれる気だろう」

「危いわ」