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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(五)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 页

青空文庫

決してふと湧いてきた驕慢ではなかった。――八幡太郎いらいの源家の血は自分にある。足利家にもおとらない嫡系の家柄でもある。――こんな世に自分が起つのは当然であるとする日ごろからの、自己の再確認だった。

「船田の入道」

「はっ」

「簿を点したか」

「点呼いたしまするか」

「む。呼んでみい」

執事の船田善昌は、社頭に立ち出て、軍の名簿を星あかりに。

脇屋ノ二郎義助以下、大館宗氏、堀口貞満、同行義、岩松経家、里見義胤、江田行義、篠塚伊賀守、瓜生保、綿打ノ入道義昭、世良田兵庫助、田中氏政、山名忠家、額田為綱、等、等、等……

呼ぶ。答える。

呼ぶ。答える。

「船田、もうよい、すべてで何人?」

「およそ百五十騎にございまする」

「百五十騎か」

少ないのは覚悟のまえであった。馬上になった義貞は、すぐ鞭を西北へ指して「行くぞ」と、麾下の将士へ目合図を配った。

「明けぬまにこそ」

義貞は号令する。

「国府を蹴ちらせ。かど出の血まつりにだ!」

「おうっ」

騎馬の者全部のムチの手が一せいに唸った。

道はいい。東山道の街道である。一陣の疾風は駈けた。義貞は先頭だった。そしておそらくいまの伊勢崎から利根の上流を望んだころも、まだ夜は明けず赤城山も見えそめていなかったろう。