轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

13 黒白帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 页

青空文庫

軍にかけ謀にかけ、始終、あの一禅門には抗しえぬ威圧感と翻弄の受け身におかれていた。何よりもその親房には、学識と思想があり、武力に理論づけ、武士を思想の下に統御していた。自分には、それがない。

また、いつも親房の手のこまかさには、奔命に疲らせられた。直義と師直との衝突も、それいらいの直義の変り方も、なお先頃、義詮と自分とを遠くに分離して、東西、個々に撃とうとした計なども、みな親房の方寸から出ていたものだ。

そして、それとはこっちも看破って親房のウラを掻くつもりでは、またいつも尊氏は、自身を泥沼にのたうってしまう破目をまぬがれなかったものである。――だのに、その恐ろしい人物もいまは南朝方にいなくなったと知ると、彼は、その強敵を敵として、無残にまでつよく自己を生かして来た大きな張りを失っていた。淋しさに似る虚の下から、

「……死んだか」

と一言、つぶやいた尊氏だった。

尊氏はしかし、以後はなお繁忙だった。

南朝方では一時、愁然としていたものの、決して戦意は沮喪してはいなかった。九州の菊池党は、健在であり、いちどもその初志を変えていない。征西ノ宮将軍(懐良親王)の旗幟は筑紫を圧している。