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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

03 みなかみ帖

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 页

青空文庫

かわりばんこ

つまりは、

“幕府、伐つべし”

“まつりごとを、王朝の古に復せ”

となす、同志的な結合をもつ後醍醐の帝座にすれば、先帝の遺臣など、いわば水に油であったのである。

次に。――もう一つの大きな反後醍醐派は、持明院統とよぶものだった。

後醍醐は、大覚寺統である。――やがての「南朝」「北朝」の対立は、この二統のもつれが遠因をなしていた。

かわりばんこ

さて、ここまで来て。

この「私本太平記」の筆者は、一つの“物語の壁”につき当ってしまった。南北朝を書くには、どうしても一度はふれなければならない“帝位の両統迭立”という厄介な課題がある。

両統迭立

こう書くと、むずかしいが、くだいていえば、根は一つの皇室が二タ派にわかれ、数代、帝位の争いに連枝連枝がもつれ合ッた結果、その即位の君を、“かわりばんこ”に双方から出す――という約束をした一と時代があったことなのである。

しかも、この約束は、守られなかった。

もし、凡夫と凡夫との約束でも、国と国との約条でも、それを守れる人間だったら、人間の歴史から戦争は半分以下にも減っていたろう。――南北朝の大乱の因は、すべてそれだとまではいえないが、少なくも、皇位継承などの重大事を、