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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
03 みなかみ帖
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,598 字 · 254 页
本間家では大いに迷った。
折も折、鎌倉からは、処刑の使者が、はや雑太ノ城へ来ていたのである。山城ノ入道は、阿新丸の心ねに同情して、城中にとどめおき、密かに会わせてやろうとしたが、息子の本間三郎と強硬な一部があって、意のままにならぬうち、三郎は鎌倉の使者と日取りをきめ、ただ阿新丸がたずさえて来た黄門どのの北の方の手紙だけを当人に見せ、
「いいおくことはないか」
と、処刑を申しわたした。
黄門どのは、その前夜、さきに写了した法華経の終りに、もう数行、
慈母ノ七々忌ニ
七月七日 権中納言資朝
と書き加え、ついに阿新にも会わず、竹田川のぐみの木河原に曳き出され、四十九歳の生涯を終ってしまった。
ところが、何の手違いか、つづいて鎌倉から追ッかけの使者がみえ「――資朝卿の処刑はしばし見合すべし」と令して来た。しかしそれは早やまにあわなかった。で、やむなく本間家と幕府のあいだで、そのことは、極秘に附し、表面「……黄門どのは病中」ということにして、薬師堂と妙宣寺との、通路の刎ね橋も、今では閉じられている始末である――ということだった。
「いや、ありがとうございました。