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いのうはりまのかみ

稲生播磨守

林 不忘

「講談倶楽部」講談社、1935(昭和10)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,172 字 · 29 页

青空文庫

奎堂は五十がらみ、茶筅髪の学者型である。一同が提げ刀のまま入り乱れて席を譲り合いながら、座につこうとする時、ひとりの侍の刀の鐺が、他の一人の刀に触れて、かちっと音を立てる。

その一人 おっと! これはこれは、とんだ粗相を。なにとぞ御容赦のほどを――。

他の一人 いや、手前こそ、お邪魔になるところへ小長い刀を突き出しておって、不調法をつかまつりました。平に御勘弁を。

両士は慇懃に挨拶して、坐る。

播磨 や、それがいわゆる鞘当て。いささかの意趣遺恨でもあろうものなら、その鞘当てからいかなる騒ぎになろうも知れぬところを、見事、平らに捌いた両人の手並み、ちかごろ鮮やか、鮮やか、ははははは。

両人 鞘当てとはどうも、ははははは、それがまた自らなる御座興となって、殿の御感を得るとは。なんなら、いま一度お当て下されい。

たがいに会釈して笑う。

座の一人 いや、文字どおりの鞘当てでござりましたて。一時はどうなることかと、はっはっは。

その二 はらはらいたしました。まさか、ははははは。

一同爆笑する。

その三 お、そう申せば、その問題のお鞘は、いかさまお見事なる作りでござるな。卒事ながら、拝見願われますまいか。