轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
とってい
突堤
宮本 百合子
「中央公論」1935(昭和10)年10月「中央公論」五十周年記念特大号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,221 字 · 15 页
こっちからその眺望がきく間は、おばあさんの方からもまだ私の乗っている俥は見えているわけなのであった。
田舎の生活は一日が永かった。その中でのおばあさんのひとり暮しも単調なものであったが、私にとっては刻々が都会にはない色彩と音響とに充たされたものであった。私は鶏や犬や子供や大人にくっついて、村の中をどこでも歩き廻った。
或る日夏草のむせかえるようななかに臥ていた。むこうの耕地の緩い斜面に葡萄畑が見えている。遠くで雷が鳴っている。
やがて葡萄棚で葡萄の葉がサッと白く葉裏をひるがえしてざわめき立ったと思うと、灼けた耕地の面を湿っぽく重い風がうねり渡って、あっちの地平線から夕立がやって来るのが見えた。
私はびっくりして草の中から立ち上り、驟雨の先ぶれで一層埃の匂いのきつくなった草道の間を一心に家に向って歩く。家から遠く来ていることがこの時になって始めて感じられるのであった。雷がいきなり近くへ来て鳴った。低く、威圧するように尾を引っぱって山々が谺する。私はもう駆け出しているのだが、両脚はサッサッ、サッサッと桑の葉に幅ひろい音を立てて迫って来て、最初の雨の一粒が汗一杯の頬っぺたを打ってころがり、道の埃をまるめたと思うと四辺は水煙り、私はずぶ濡れだ。