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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

呼出しを受けたら、その都度、伊東署へ来てもらえれば」

「すると、結局、ここから動けないということなのね」

捜査主任は微笑しながらうなずいてみせた。

「そのほうが、どちらのためにも都合がいいだろう、時間の節約にもなるし」

「死体があがるまで、こんなところで待っていなければならないというのは、どういうわけなんでしょう」

「君のためにも待っているほうがよさそうだ。検尿の結果、殺人容疑が、自殺干与容疑ぐらいで軽くすむかもしれないから」

「それは死体が揚れば、のことでしょう?……湖心に吸込孔があって、湖底が稚児※淵につづいているもんだから、この湖水で死体が揚ったためしがないってことだったけど」

「それは伝説だ……この湖は石灰質の陥没湖じゃないから、吸込孔などあろうはずはない。いぜんは深かったが、関東大震災で底の浅い湖水になった。白髪になるまで待たせはしないから、安心したまえ」

ちょっとしたことだと思っていたが、どうやら殺人容疑になるらしい。久美子は気分を落ちつけるために、煙草に火をつけた。

「災難ね……あきらめて、死体が一日も早く揚るように祈ることにしましょう。キャンプ村のバンガローへ移りたいんだけど、いいでしょうか」