轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
のうのなかのれいじん
脳の中の麗人
海野 十三
「日の出」1939(昭和14)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,774 字 · 28 页
とたんに、彼は思わず大きなおどろきの声をあげた。
なぜといって、その手帖にこまかく書きこんである文字は、たしかに彼の筆蹟だったのであるから。
「ふーむ、これはたしかに自分の筆蹟にちがいない。だが、この手帖は、さらに見覚えのない品物だ。一体どうしたというんだろう」
彼は、すっかり気持がわるくなった。
たしかに自分の筆蹟にちがいないのに、その手帖には見覚えがない。こんなふしぎなことがあろうか。
その疑問を解くために、彼はつとめて気を鎮めながら、手帖に書かれた文句をよみはじめた。
こんなことが書いてあった。
「五月××日。天気がいいので、堀切の菖蒲園へいってみる。かえりに、浅草へ出て、映画見物。家へかえったのは午後十一時半だった。部屋の鍵をあけたとたんに、背後から声をかけられた。ぷーんと髪の香がした。Yだ。Yが立っている。しかたがないので、部屋へ入れる。かえれといったがかえらない。無理やりに泊ってゆく。困ったやつだ」
彼は、これを読んで、溜息をついた。そして首をふった。
「へえ、どうしたというんだろう。一向に覚えがないが……」
この日記によると、Yという女が、夜おそくまで、部屋の外に立って、主人公のかえりを待っていたというのだ。