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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

ミサ子が××○○会社からとっている月給は英文、邦文両方やって三十八円だった。そこから天引食券代五円、クラブ費親睦費とさしひかれる。間代を十円払うと、あと食べてエスペラントの月謝を出し、たまに映画でも見るのがやっとだった。

何時になっても家へさえかえれば、炊いた御飯があるというだけでも、のんきになれる。だが――

「どうしようかしら……」

ミサ子は首を振り振り返事に迷った。実のところ、ミサ子は姉夫婦のやってるような暮しの中へ引ずり込まれるのが厭だった。

ハッキリ返事しないでいるうちに、

「ヤア」

と、太田がドテラに羽織という姿で帰って来た。

濃い眉と眉との間をテラテラ光らせ、剃りたての顎、長めな鼻の下へ小さく髭を立ててる。ミサ子が知っている限りの太田は、いつも同じ片づいた表情で、

「――どうです? この頃は」

と長火鉢の前へ座った。

「相変らず……」

「どうだね、一つミサ子さんの会社へでも雇って貰えまいかね」

嘘とも本当とも分らない表情でそう云いながら太田は朝日に火をつけた。

「私みたいなヘボからじゃだめよ」

「いくらでもいいよ。ほんとに! そう云ってみんなに頼むんだが、これでいざとなるとそうも行かないものと見えてなかなかないね」