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ふねでついたまち
船でついた町
小川 未明
「国民新聞」1930(昭和5)年1月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,924 字 · 6 页
そして、あなたが、逃げ出しなさるのも道理と思います。ここから、百里ばかりへだたった、A港というところは、ちょうど、あなたのおいでなさるのに、いいところです。」と、ものわかりのした人は、教えてくれました。
金持ちは、どこへゆこうというあてもなかったから、A港にゆくことにしました。ある日、船は、その港についたので、金持ちは、上陸しました。
その町は静かな、なんとなく、なつかしい町でありました。気候もよく、住んでいる人々の気持ちも平和でいるように見受けられました。
彼は、いろいろのところへ旅行もしましたが、こんないいところは、はじめてでした。いいところをあの人は教えてくれたと感謝しました。
町のようすは、たいして変わってはいなかったが、たいへんに、気持ちがいいのでした。
「どうして、この土地は、こう平和なんだろうな。」と、歩きながら考えました。
あちらから、人のよさそうな、おじいさんがやってきましたから、金持ちは、近寄って、
「たいへん、あなたたちは、ゆったりとしていられますが、気候がいいからでしょうか。それとも金があって、豊かなためでしょうか?」と、問いました。