轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふねでついたまち

船でついた町

小川 未明

「国民新聞」1930(昭和5)年1月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,924 字 · 6 页

青空文庫

彼は、丘へ上がりました。

ここには冬もなく、うららかな太陽は、海を、町を、照らしていました。すこし上がると、ばらの花が咲いていて、緑色の草が、いきいきとはえていました。

金持ちは、草の上に腰をおろして、たばこをすいながら、絵に描いたような、あたりの景色にうっとりと見とれたのです。

「あのおじいさんのいったことは、ほんとうだ。無益な欲が、かえって人間を不幸にするのだ。そして、欲深になったものは、もう二度と、生まれたときのような、美しい気持ちにはなれないのだ。だれとも争わず、仲よく暮らしてゆくのが、本意なんだ。この世の中が、まちがっていることに気づかなかったばかりに、俺も、いつしか欲深い人間になってしまった。この町の人々のような平和な生活がうらやましい……。」

頭の上の木のこずえには、美しい小鳥が、しきりに鳴いていました。彼は、なにを考えるということもなく、夢を見るような気持ちで、小鳥の唄にききいっていました。

そこには、金持ちもなく、貧乏人もなく、ただ、美しい世界があるばかりでした。