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しば、あざぶ
芝、麻布
小山内 薫
「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月25日~30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页
森元町
むかしあんなに遠浅だった浜に、立派な埠頭の出来ているのに驚いた。そこの建物が悉く倉庫ばかりで昔の料理屋や旅館などの影も形もないのに驚いた。
ただ、少しも変らないのは、海の向うに見える浜離宮の黒松だけである。
私は、あの黒い松を見た瞬間に第二次「新思潮」創刊号の発禁という、実に不思議な連想をおこした。
森元町
麻布の森元も特色がないようで、特色のある土地である。
ちょうど天文台の下にある窪地で、飯倉四丁目の停留場から細道を曲がりくねってはいる一区域である。昔は小芝居などもあったらしく、芝公園の山の上から、幟なども見えたらしい。
私の住んでいた頃は、お妾さんや女優や旧劇の女形などが住んでいるのが目についた。気のせいか世に隠れているような人達ばかりが巣を食っているように見えた。
併し、私は決して隠れてはいなかった。私は慶応義塾へ歩いて通えるのが第一都合がよかった。私は一週に一度古川橋を渡って、綱町の高台へ登って、それから坂を降りて、裏門から三田の教室へ行った。子供達はまだ小さくて、芝公園の幼稚園へ通った。
私は市村座の顧問に雇われて、ここから殆ど毎日下谷の二長町へ通った。