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しば、あざぶ

芝、麻布

小山内 薫

「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月25日~30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页

青空文庫

竜土会

この井戸がいけないのだという説が出て来た。或人が根岸の方の紺屋で家相に詳しい老人を連れて来て見せた。

「これは後家家屋というのです。直ぐ越さなければいけません。」

老人はいきなりこういった。

「後家家屋といいますと……」

家内がこう訊くと、

「後家が出来るんです。みんな死んでしまうんです。」

それは大変だというので、三番目の子供が流感で寝ている最中に、その家相の先生の指図で、四谷の方に家を探した。坂町に好い家があった。そこで、寝ている子供を蒲団にくるんだまま自動車にのせて、引越しをした。

子供の病気はその日から快くなった。

勿論、偶然事に違いない。併し、それからというもの、家内は家相の信者になってしまった。

だが、転々として借家住居を続けている私にとって、家相というものは、何という不便なものだろう。

竜土会

麻布でもう一つ想い出すのは、竜土軒のことである。そこは麻布一連隊の前にある古風な小さい西洋料理店であるに過ぎないが、ここで私の先輩達が、むかし竜土会というものを開いたのである。

国木田独歩、島崎藤村、柳田国男、田山花袋、中沢臨川、蒲原有明などという先輩の驥尾に付して武林繁雄(無想庵)や私なども、よくその会へ出た。