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くさまくら

草枕

夏目 漱石

一个画家厌倦了人情世故,独自钻进深山。他想找一处能喘口气的地方,却在旅途中发现——原来诗和画,都在眼前。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 页

青空文庫

若い男は今度は別に辞退もしない。ただ黙っている。

「支那の方へおいでですか」と余はちょっと聞いて見た。

「ええ」

ええの二字では少し物足らなかったが、その上掘って聞く必要もないから控えた。障子を見ると、蘭の影が少し位置を変えている。

「なあに、あなた。やはり今度の戦争で――これがもと志願兵をやったものだから、それで召集されたので」

老人は当人に代って、満洲の野に日ならず出征すべきこの青年の運命を余に語げた。この夢のような詩のような春の里に、啼くは鳥、落つるは花、湧くは温泉のみと思い詰めていたのは間違である。現実世界は山を越え、海を越えて、平家の後裔のみ住み古るしたる孤村にまで逼る。朔北の曠野を染むる血潮の何万分の一かは、この青年の動脈から迸る時が来るかも知れない。この青年の腰に吊る長き剣の先から煙りとなって吹くかも知れない。しかしてその青年は、夢みる事よりほかに、何らの価値を、人生に認め得ざる一画工の隣りに坐っている。耳をそばだつれば彼が胸に打つ心臓の鼓動さえ聞き得るほど近くに坐っている。その鼓動のうちには、百里の平野を捲く高き潮が今すでに響いているかも知れぬ。