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あらほうし

荒法師

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 页

青空文庫

信念、なにものが亡ぶるとも信念の亡ぶることはないのだ、見ろ……この領土は敵に侵犯され、領主も兵も孤城を守って戦っている、この事実を目前にしてなんの仏法、なんの悟道だ、おのれはこの地に生れこの郷土の恵みを享けて育った、これをよそにして生死の大事があるか、足を地につけろ、道はここにある、喝!」言葉の終りは叫びになっていた、叫び終ると同時にかれは数珠をひき千切った、ばらばらと飛散する数珠玉を踏みにじって、かれはしずかに眼の前にいる武者を抱き起した、それは疾にもう息が絶えていたけれど、俊恵は生きている者に対するように囁いた、「唯今のごいち言、胆に銘じました、こなたには及ばぬまでも御遺志を継いで城へはいります、ぶしつけながら鎧を借ります」そう云いながら死者の鎧を解こうとした、するとしずかな人の足音がして、――お手伝いを致しましょう、そう云いながら花世が近寄って来た、俊恵は思いがけなかったのであっといった、「……お帰りが夜道になってはと案じられたものですから」云いわけをするように花世はちらとこちらを見あげた、「此処だということがどうしてわかった……」