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あらほうし

荒法師

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1944(昭和19)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,734 字 · 36 页

青空文庫

「おあとから蹤いてまいりました、たぶん此処へいらっしゃるのだと思いまして……」かれはじっと娘の顔を見まもった、花世はその眼を眩しそうに避けながら、すぐに死者の鎧を解きはじめた。その姿を見やるうちに、まだこれまでに覚えたことのない、新しい火のような感動が胸へあふれてくるのを俊恵は感じた、花世の眩しそうな眼つきや、どこかに軽いおののきのみえる身ごなしや、こちらへ見せている横顔の寂しげな色が、なにを表白しているかということにはじめてかれは気づいたのだ、それはまるで痛みのように、じかにかれの胸へつきとおり、そこで火をふきだすように思えた、「生きる」ということがどういうものであるかを、生れてはじめてみつけたように思えた、「……わたしは城へはいる」かれは叱りつけるような調子でそう云った、花世はそっと頷いた、なにもかも知っているというようすだった、「すべては次ぎの世のことだ、いいな、花世」「はい……」「約束するぞ」叱りつけるような調子だったが、そのなかに隠れている意味はまさしく娘の心に通じたようだ、花世はもういちど「はい」と頷きながら、解きはなした